田中ロミオ

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

うーん、これはどうなんだろう。せっかくカリスマを表舞台に引っ張りだしたんだからもっとド直球なロミオ節ジュブナイル書いてほしかったな。ガガガのラインナップが発表されるまではハヤカワがJコレでロミオに原稿依頼したらいいのになと妄想してた、リアルフィクションでも許そうってくらいの気持ちで。ニヤニヤしながら小ネタを楽しみ、そこかしこに散りばめられた作者の企みをサルベージ。続きは恐ろしいことになるかもしれないと予感させるけどラノベのシリーズとして小出しになるのは微妙。やっぱりロミオに期待するのはもっとマッドでグロテスクで聖なる、なのカナ?
とここまで言っておいて白状すると俺はオブセッションのない話が苦手なのです。ゆえにこういった観察者が語り手に採用されている場合は入り込めない入り浸れない。忍や太一になった時に味わったズタズタに切り裂かれ、あるいは切り裂くあの被加虐の愉悦をもっと味わいたい困ったちゃんなのです。世界観とアイデアと叙述が渾然一体となって迫りくるのが理想。オクル頑張ってください。

中村九郎

id:evatakaから転生しました。転がり、生きる。つまりロックンロールです。

樹海人魚 (ガガガ文庫)

樹海人魚 (ガガガ文庫)

またしても傑作をものにしてしまったね。アリフレロとやってることはあんまし変わってないけど、むせかえるようなロマンティシズムの落としどころの素敵さでこっちに軍配をあげよう。てかこっちのほうが神話めいてるよね。今回は鉱物的な視覚性に眩惑されながら読みました。特に序盤は赤い糸やらバービーが凍らせた廃墟での霙が出てくるところですでにノックアウト。前作もそうだけど、ライトノベルとして整いすぎなくらいで読んだ後はいいもん読んだなと思うしかないのだが、パラパラと短いシークエンスを確認してみると割れたガラス細工の破片がメチャクチャに広がっているような光景が広がっていてその眩惑感がラストにいたるまで持続しつつ文体にリアリティを与えているのが分かる。中村九郎が読めない読めないとやかましい輩はここまで書かれて分からないようならもう読まなくていいんだぜ?